再び無沙汰をして申し
譯ない。
此処倫敦から貴君に二度目の手紙を書く。貴君は元氣にしてゐるだらうか。
先日、教授に
御供して、初めて
此方の舞踏会に出席した。此方の舞踏会は、何から
何迄日本と違つてゐて驚いた。
先づ
舞踏室が
甚だ豪奢である。紳士淑女の衣装も大層華やかだ。
円舞曲を一曲踊つたが、相手の女性の背の高いのには辟易した。此方の女性は皆、白大理石の
膚をして大変美しいが、慎しみ深さに
缺ける
処が
白璧微瑕だと小生は感ずる。
何やら酷く浮かれた内容になつて仕舞つたが、舞踏会の際に撮つた冩眞が出来上がつたので同封した。小生の右に立つ紳士が、師のロバート・ウエールシユ博士である。師の薫陶を
受て、小生も益々精進したい。
然では乱筆乱文、
失禮する。
西暦一九一二年 三月十日
松永栄一郎
相澤 紫殿